
この記事は、音楽イベントを自分で開催したい!と思っている方へ向けて、大まかな流れの紹介と、より魅力的なイベントを実現するためのポイントについて書いた連載記事です。
新型コロナウイルスの感染拡大により、音楽イベントの数は減ってしまいました。それでも、音楽は心に光を届けてくれるもの。
プラネタリウムやゲストハウスなどで、最大150名規模の音楽イベント企画を開催してきた立場から、今後も小さくてもあたたかい音楽の場・文化の灯が続いていくことを願って、イベントづくりで経験してきたことを記事にまとめて発信することにしました。
全部で9記事あり、今見ている記事は9記事目です。各記事に書いている内容や、どんな人が書いているかは1記事目に書いています。
オンラインイベントとは
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人が集まるリアルイベントの開催が難しくなりました。それをきっかけにオンラインイベントが普及しています。
オンラインイベントは、インターネット上で開催するイベントです。企画準備としては、これまでの記事で紹介したことに加えて、現場収録と配信が加わります。
現場収録とは、カメラで映像を、音響機材で音を収録することです。事前に映像の構成を考え、ロケハンを行い、想定カットを決めた上で、撮影香盤表をつくり、当日の収録を進めていきます。
配信は、映像・音声データをオンラインを通して視聴者に届ける作業のことです。OBSなどの配信ソフトを使う場合や、ZoomとYouTubeなどで完結させる場合など、様々な技術的な方法があります。
イベントは生配信として中継する場合もあれば、事前に収録し、編集した映像をイベント当日に配信する場合もあります。前者は同じ時間を共有しているという感覚を得やすいですが、配信トラブルのリスクがあります。後者は配信トラブルのリスクが少ないものの、時間を共有するという感覚は薄いです。
生配信でも収録イベントでも、イベント当日に都合がつかなかった人へ向けて、2週間など期限を決めて、それぞれのタイミングで映像を閲覧できる有料のアーカイブチケットを販売することが多いです。
2021年に閉館した原美術館でライブを収録し、オンライン配信イベント『ひかりの感触』を開催した。the sleeping beautyと羊文学の塩塚モエカに出演いただき、東京の原美術館では最後のイベントとなった。
オンラインの音楽イベントの良い点 / 課題
オンラインの音楽イベントには、人数の上限がない、遠くの場所から参加できる、などのリアルイベントにはないメリットがあります。しかし、物理的な波として生音を浴びる体験や、熱狂や多幸感のある空気の共有はオンラインだと難しく、決してリアルイベントの代替にはなりません。あくまでも別のイベント体験として捉えましょう。
オンラインイベントの良い点
- 感染リスクがない
- イベント会場から遠くに住む人も(海外からも!)参加できる
- 誰もが自宅から参加できる
- 収録ライブの場合、音質や映像の構成を編集できる
- アーカイブ配信で、好きなタイミングでライブ映像を楽んでもらえる
- アニメーションや3Dなど、オンラインだからこそのビジュアル表現ができる
オンラインイベントの課題
- 配信の技術知識が必要
- 配信や映像など、リアルイベントに加えて技術スタッフが更に必要
- リアルの音楽体験には劣る
2021年に開催したオンライン読書BGMライブ『Music For The Story II』の様子。アーティストの自宅から、日常風景を交えつつ自然体なライブ映像を配信した。
魅力的なオンラインイベントを実現するコツ
この連載では、配信に関する詳しい技術的な方法や、映像としてどう収録すれば魅力的か、などについては割愛させていただきます。企画としての視点で気にしたいポイントをいくつか紹介しますが、全部は書ききれないので、あくまでも参考としてご覧いただけると嬉しいです。
生配信の場合
- 通信環境:イベントの命です。基本はWi-Fiではなく光回線にしましょう。イベントのために回線をわざわざ引くこともありました。
- 音質:音楽イベントとしてとても重要です。配信卓に送るまでの音質と、配信時の音質の両面を気にしましょう。
- 映像のスイッチングスタッフが必要です。適切なタイミングで画を切り替える専門技術です。
- 配信用の進行表では人の動きだけではなく、蓋絵やBGM、録画映像など、どの素材をいつ使うかのタイミングも記載しましょう
- Zoom配信などの場合は、マイク付きイヤホンなどで入力ノイズを軽減しましょう
- 配信するPCの負荷が重いと配信遅延や配信落ちに繋がります。スタッフとのメッセージやSNS監視をするPCやスマホは、配信用と別に用意しましょう。
収録の場合
- 事前に撮影したい映像の構成案や絵コンテを詰めましょう
- 現場での撮影香盤表は、時間に余裕を持って、休憩時間も含めて作りましょう
- 企画者側でスタッフ全員のお昼を用意しましょう。テンションは撮影の出来に直結します!
- 事前に必ずロケハンしましょう
- 映像編集時は、音声や映り込みなど細部まで確認し、ディレクションしましょう
生配信/収録 共通
- キュー出しをする進行スタッフが必要です。撮影の流れを把握し、現場のテンションを上げられる人が適任です。
- 規模にもよりますが、ステージ周りの舞台監督が必要です。機材セッティングや配置、配信側との連携などが役割になります。
- カメラ台数:3台など多い方が動きが出ておすすめです。固定の他に、ジンバルなどで手持ちも用意しましょう。

その他の記事について
以上で9記事の紹介は終わります。ここまで読んでくださってありがとうございました!あなたのイベントの成功を願っています。
その他の記事についても、以下のリンクから閲覧いただけます。
About
このブログ『音楽イベントの作り方』は、音楽イベント企画『orange plus music』が日々執筆しています。自分の好きな「穏やかな音楽」を好きになって欲しいという思いで、2018年よりプラネタリウム・ゲストハウス・演芸場・重要文化財など様々な場所でライブイベントを開催。また本業では会社員としてデジタルマーケティングやクリエイティブ制作の広告代理業にディレクターポジションで関わっています。音楽の場が継続していくために、自らイベントを企画する人が増えることを願って、企画段階から告知、準備、運営、事後まで含めた音楽イベントづくりの豆知識を記事で発信しています。