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広告担当者がSpotifyに注目すべき7つの理由と、デジタルオーディオ広告の未来

2017.05.21

5/18に開催された「Spotify for Brands」広告業界向けセミナーで、Spotifyの広告メニューや仕組みが発表されました。そこで感じた、ブランドのメッセージを本当に届けるために広告担当者がSpotifyに注目すべき理由と、デジタルオーディオ広告の未来について考察します。
 

音楽ストリーミングサービスSpotifyが、日本でも広告メニューを始めます

 
Spotifyは、2008年に始まり現在では4000万曲以上に出会える音楽ストリーミングサービス。全世界では1億人を超えるユーザーが利用していて、有料会員は先日5000万人を迎えました。
 

 
ユーザー数の拡大に伴い、Spotifyが目指す「持続可能なフリーミアム(誰もが無料で音楽を聴くことができて、アーティストにも収益が還元される仕組み)」をつくるためにも、広告収益が必要です。2016年9月にSpotifyが日本に来てから9ヶ月後、広告の展開も始まりました。
 
日本の音楽市場的には、ストリーミングの割合はまだまだ7%ほどと少なく、CDが強い国であることは変わりないです。しかし、アメリカも2011年9%だったストリーミング市場が2016年に51%と大きく成長していることから、日本も3〜5年後には市場規模が大きくなるであろう、とセミナーでも述べられていました。
 
今回のセミナーでは、前半にSpotify日本法人の代表から「持続可能なフリーミアム」をつくるために、「音楽リスナーとの強いエンゲージメントを築くこと」「信頼されるメディアであること」「イノベーションとしてのオーディオであること」を実践していくという話がありました。
 
そして後半には広告媒体「Spotify for Brands」について、Spotify広告の設計意図や具体事例などの詳細な話がありました。このブログでは、主に後半の内容を元に書いていきます。
 
 

広告担当者がSpotifyに注目すべき7つの理由

 
前職でGoogle、Facebookなど様々な広告媒体のプランニングや運用をやっていた自分が感じた、ブランドのメッセージを本当に届けるために広告担当者がSpotifyに注目すべき理由を7つピックアップします。
 
細かい媒体仕様や広告メニューは「Spotify for Brands」のウェブ媒体資料、そして何よりも自身でSpotifyを使って広告を体験してみて欲しいです。
 
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1.ストリーミングサービスの特性:ユーザーは新しい音楽を求めている
 
音楽ストリーミングスサービスを使って良かった点として、「新しい音楽に出会えた」というのが一番に挙げられています。(2016年の調査なので、Spotifyは対象でなかったようです。)
 

※参考:2016年「定額制音楽配信サービスの利用実態」に関するレポート
 
検索行動やSNS閲覧時とはまた違った、「知らないものに出会いたい」という気持ちがユーザーにあるため、広告に接触しても自然と聴いてしまうことが多いのではと考えられます。
 
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2.業界的な課題に向き合う方針:デジタル広告の価値を高める設計
 

 
Spotify広告の方針で素晴らしいと思ったのが、世の中の課題に向き合った仕組みを構築しているところです。例えば、web広告で直近議論されている3つの課題があります。
 
①ビューワビリティ問題:ユーザーが広告を見ていない
②アドフラウド問題:人間ではなくbotが広告に接触している
③ブランドセーフティ問題:広告でブランド価値が毀損される

 
上記すべてにおいて、広告主がある種無駄な広告予算を投下している、というのが議論されている点です。これに対してのSpotifyの施策は以下でした。
 
①ビューワビリティ問題:課金形態を定義。また、広告枠自体も見えるとこにのみ設置。
②アドフラウド問題:クロスデバイスのログイン情報により、人間であることを判断。
③ブランドセーフティ問題:広告枠はサービス内のみ。また1度に1社のみ広告表示。

 
業界的な課題に向き合う信頼感だけではなく、より自然にブランドのメッセージを届けられる可能性を高めているということで、デジタル広告の価値を守る広告媒体だと思います。
 
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3.音の特性:「耳」と「認知」
 
音の特性を活かせるのはラジオCMや動画広告と同じとも言えます。特性の一つとして、音はユーザーの目を奪わないことから、通勤時間でも、ランニング中でも、ゲーム中でも、仕事中でも、いつでもどこでも「耳」さえ空いていればメッセージを届ける機会があることが挙げられます。これは、デジタル広告でバナーや動画で多くの広告枠が溢れている現在、別の切り口で訴求できる手段となるでしょう。
 
またコンビニの入店音やビールを開ける音など、ユーザーが普段の生活で「認知」している音を、広告によって思い出してもらうということもできるでしょう。実際、第一興商の事例では「ふるさと(うさぎ おいし かの山〜)」のメロディに添えてSpotify広告を配信していました。
 
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4.デジタルオーディオ広告の特性:すぐにウェブサイトへ誘導できる
 
これまでラジオCMでは、ユーザーが広告に興味を持ってより深い情報を知りたいとき、記憶して検索することが必要でした。この時、名前を聞き取れなかったり忘れてしまうと、検索することができなくなります。
 
デジタルの場合、この課題が解決されます。音を聴いた後に、バナーをクリックしてすぐにウェブサイトに誘導することが可能です。KitKatは音声でバナーのクリックを呼びかけたSpotify広告を実施したところ、認知・興味関心・購入意向すべて一般的なディスプレイ広告よりも効果が出たと、Spotifyの事例では紹介されています。(※セミナーにて配布された媒体資料より)
 

※最近はSpotify自身のプレミアム会員訴求が多い
 
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5.Spotifyのマーケティング:音楽と感情の関係性
 
セミナーでは、広告含めてSpotifyがユーザーのことを深く考えていることが説明されました。その一つに、音楽が自分自身や過去・未来について考えるきっかけになったり、体験を記憶するものだったりするという「音楽は感情に影響を及ぼせる」という話がありました。
 
この文脈で、Spotifyはより個人に最適化されたレコメンドや広告配信を行うために、例えば「ジャズ」というジャンルでのくくりではなく、ジャズの中でも「ギターが目立つ」「ビートは速め」「歌がない」など複数の要素に分解した上で、時間や端末を組み合わせて「その音楽がどういうシチュエーションで聴かれているか」をデータとして分析しているそうです。Googleが提唱するマイクロモーメントを、音楽という軸で捉えていく姿勢が伺えます。
 

※Spotify for Brandsのサイトではこのような特集記事がいくつか掲載されています。
 
更に、音楽は感性に訴えるものであるため、全てのレコメンドを機械でせずに、キュレーターによるプレリストを共有する仕組みを整えています。気分や思考という点でも、ユーザーのマイクロモーメントを捉えようとしています。
 
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6.Spotifyのテクノロジー:ビッグデータの活用と協力体制
 
個人に最適化された情報を届けるにあたり、様々なデータを用いた施策を行っています。例えば、「マイクロセグメンテーション」という考え方も活用しているようです。
 

「マイクロセグメンテーションというのですが、『ジャスティン・ビーバーの『Sorry』をバレンタインの日に42回再生した人、あなた大丈夫』というようにピンポイントのデータを使って、ストーリーづくりをした。」〜(中略)〜消費される音楽や、ユーザーの音楽消費の仕方と位置情報などを用いて、極めて細やかなセグメンテーションを引くことができるようだ。「東京都内でも三鷹でよく聴かれている曲、港区で聴かれている曲、満員電車でよく聴かれている曲などが分かる。」( いつ音楽ストリーミングはキャズムを超える?:ローンチ5カ月のSpotify Japan | DIGIDAY )

 
天気に合った音楽を配信するサービス「Climatune」のリリース含め、データを元に個人に最適化された情報を提供することは、広告の目的である「適切な人に、適切な情報を届ける」ということがより達成できるということを示します。
 
またSpotifyは、ちょうど今月ブロックチェーンのスタートアップMediachainを買収したように、過去にもコンテンツレコメンデーションのMightyTV、そして音声検出のSonalytic、音楽ビッグデータEcho Nestなどを買収して来ています。日本でも電通デジタルが投資していたりと、テクノロジーの心強いバックアップが複数存在することから、今後の機能改善にも期待ができます。
 
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7.ユーザーの意見:広告に良い印象を持っている
 
「広告が邪魔だ」と言っているユーザーもいますが、「広告は気にならない」「広告が好き」という声も見かけることができます。Twitter、Facebook、Instagram、Googleディスプレイ、Youtube広告などと比べると、広告を好きと言っている割合は高い気がします。
 
※「Spotify 広告」で検索した時のツイートがここに表示されます。

 
 

デジタルオーディオ広告の未来

 
デジタルオーディオ広告、という概念はSpotifyだけではありません。Amazonの音声アシスタントAlexaが車や家電に次々と搭載されていたり、先日のGoogle I/Oでも音声アシスタントGoogle Homeの日本販売が発表されていたりします。
 

 
「OK Google、おすすめのピザ屋ある?」という質問にも、「あなたはA店が好きそうだけど、B店は今クーポンがあるよ!」という返答が広告として来ることもあるでしょう。きっとすぐにGoogle Mapsへ誘導されます。
 
またSpotifyを通じて、「この曲のレコード欲しい!」と思った瞬間に注文したり、「このアーティストのライブに行きたい!」と思った瞬間にライブチケットを購入したりできる仕組みの構想も既に出ています。
 

だから、世界中のストリーミングサーヴィスと繋がって受注のセンタライズができれば、いちばん合理的にレコードをつくれるはずなんです。そこまでいくとかなり壮大ですが、ひとつのサーヴィスと組めるだけでも、たとえばSpotifyのなかで予約ができるだけでも、世界がまったく違ってくると思うんです。( オンデマンドヴァイナルで 「レコードづくり」を民主化せよ:連載「音楽の未来をつくる人」#1|WIRED.jp )

 
ユーザーがSpotifyでアーティストをフォローした時に、位置情報とチケットの予約空き数からライブ情報を広告としてレコメンドするという仕組みができれば、よりアーティストにとって価値のあるサービスにもなるでしょう。事業拡大として期待したい部分です。
 
デジタルオーディオ広告は、このようなプラットフォームの広がりやSpotify広告のアップデートに期待しつつ、合わせて「音」を軸にしたブランディング、マーケティング、デザイン…という考え方も整理していきたいところです。
 
まずは、目前のデジタルオーディオ広告「Spotify for Brands」の解禁により、新しくどんな広告主のどういうメッセージがユーザーに届けられるか、楽しみですね。環境音楽が好きな人に地方の自然豊かなゲストハウスを訴求したり、「ポテトサラダが食いてぇ」と歌う曲の後に野菜の通信販売を訴求したりなど、音楽ならでは文脈を汲み取ったプランニングが求められるでしょう。
 
 
→ Gerbera Music Agencyでは音楽に関わるPR支援を行っています

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