Twitterに登録する誕生日、ブラウザから訪れたサイトの履歴、またTポイントを使ったオフラインの購買データなどはインターネット広告のターゲティングに活用されています。何の情報がどのように活用されているのか、個人情報保護の観点ではどうなのかを調べた上で、「ユーザーにとって価値のある情報を届ける」ための広告とは何かを考えてみたいと思います。
目次
・Tポイントの情報が広告配信に使われているって知ってました?
・どんな情報がインターネット広告に使われているかを調べてみました
・情報が”個人情報”として捉えられる場合と、そうでない時の違いについて
・「そのユーザーにとって価値のある情報を届ける」ためのインターネット広告を考える
Tポイントの情報が広告配信に使われているって知ってました?
TSUTAYAやファミリーマートでお馴染みのTポイントカード。多くの方が所持していると思いますが、この実店舗の購買行動データや、性別・年齢といった登録データは、インターネット広告の配信に活用されています。
邦画DVDを多くレンタルする人、ジャズCDをよく買う人、ファミチキの購入頻度が高い人…実際にどこまで配信に活用しているかはわかりませんが、活用されていてもおかしくありません。ここで重要なのは情報はあくまでもより価値のある広告を届けるために利用されるという前提です。
※参考:DSP「MarketOne®」にて購買傾向を用いた広告配信を開始
購買データを用いた広告は、Amazonや楽天で見かける”あなたへおすすめ”という「レコメンド広告」でも見かけることができます。
また、これ以外にもいわゆる「リマーケティング広告」という一度サイトに訪れたことのあるユーザーへ配信する広告など、個々の行動情報を広告配信に活用している例は多くあります。
どんな情報がインターネット広告に使われているかを調べてみました
ここで扱いたい情報を2つに区分すると「行動履歴」と「登録情報」に分けられます。
それぞれの情報が、ユーザーにより価値のある広告を届けるために、どのように利用されているかを挙げてみましょう。
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※この「広告」が今どのようなターゲティングであなたに表示されているか、ぜひ考えてみてください。
■行動履歴を広告配信に使うパターン
オフライン、オンライン問わず、僕らが実際に起こした行動をデータとして蓄積し、そのデータを元にターゲティングすることで広告配信に活用するパターンです。以下のような例が挙げられます。
・ブラウザ
⇒サイトへの来訪を記録し、「来訪したことがある」ユーザーをターゲットに広告を配信
⇒サイトの閲覧履歴から「趣味・興味・関心」を分析し、特定の「趣味・興味・関心」だと思われるユーザーに広告を配信
⇒検索履歴を記録し、特定の検索語句を検索したことのあるユーザーへ広告を配信
⇒YouTube上で特定の動画を再生したことのあるユーザーに対して広告を配信
・端末情報
⇒位置情報を元に、現在地に合わせて近くの実店舗情報を広告として表示
⇒接続環境がWi-Fiの時にだけ、(ゲームなど)データサイズの大きいアプリの広告を配信
⇒OSがiOSのユーザーにのみ、iOSアプリの広告を配信
・利用履歴
⇒(ECなど)過去の購買情報を元に、ユーザーがよく購入する商品や志向性を判断。レコメンド形式で広告配信。
⇒(Twitterなど)ソーシャルメディアに投稿した内容やフォロー、いいね!などの行動履歴から「趣味・興味・関心」を分析し、特定の「趣味・興味・関心」だと思われるユーザーに広告を配信
※Googleアナリティクスを触ったことがある人はピンと来たかもしれませんが、左のこの辺りもGoogleが様々な行動履歴や登録情報から判断していると思われます。
■登録情報を広告配信に使うパターン
TwitterやYahoo!、楽天など各種webサービスの利用に伴い登録する情報の中にも、第三者がデータとして活用できる状態の情報は多くあります。
・よく登録する情報
⇒誕生日の登録により、年齢を判断できる(※10代に通信制高校を訴求、など)
⇒性別の登録により、男女を判断できる(※女性にレディースファッションを訴求、など)
⇒住所の登録により、地域を判断できる(※名古屋限定イベントの広告を名古屋付近のみに出す、など)
⇒学業・職業の登録により、地域や業種を判断できる(※◯◯大学限定、就活セミナー開催!、経理ソフトにお困りのあなたへ!、など)
⇒メールアドレスの登録により、同じアドレスで他サービスを利用している時に広告を配信できる(※ECサイトに登録したアドレスとFacebookに登録したアドレスが同じ場合、FacebookでECサイトのセール広告に接触する、など)
※Twitterは誕生日にカラフルなバルーンが表示されます。「祝われると嬉しい」という心理をうまく使った、ユーザーが誕生日を登録したくなる仕組みですね。
上記の行動履歴や登録情報は単一のケースを想定していましたが、実際にはDMP(データマネジメントプラットフォーム)と呼ばれるような、複合したデータを利用する仕組みも存在します。
いわゆるビッグデータを活用したマーケティングの一つが、これらの広告配信と考えてもよいかもしれません。
(※参考:DMPの仕組みと特徴|デジタルマーケティングラボ)
情報が”個人情報”として捉えられる場合と、そうでない時の違いについて
ここで一つ明記しておきたいのが、個人情報の定義です。
『個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などによって特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それによって特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)。』( 「個人情報」の基礎知識|プライバシーマーク制度 講座|よくわかる プライバシーマーク制度 )
上記のように「個人に関する情報であること」かつ「特定の個人を識別できること」であることが、個人情報の定義となります。
インターネット広告の場合、基本的には「特定の趣味を持つ誰かに配信」「特定のサイトへ訪れたことのある誰かに配信」など、個人を特定できないような仕組みになっており、個人情報のルールは適切に管理されています。
※Googleの場合、例えば上記のようなページに詳細が記載されています。( プライバシーとインタレスト ベース広告について – AdWords ヘルプ)
またインターネット広告推進協議会 JIAAは、情報を扱うことに対してのガイドラインを設定したり、オプトアウトの仕組みと整えたりなど、安全なインターネット環境を維持するための動きをしています。
(※参考:行動ターゲティング広告に共通のアイコンを表示する「JIAAインフォメーションアイコンプログラム」の認定を開始│JIAA )
しかし、情報管理におけるリスクも存在するのが実際のところです。自社データ流出だとベネッセの個人情報流出や日本年金機構のサイバー攻撃が記憶に新しいですね。
当たり前ですが、不必要な情報の登録や使っていないwebサービスの利用放置(退会しない)などは慎む方がよいでしょう。
「そのユーザーにとって価値のある情報を届ける」ためのインターネット広告を考える
広告ブロック機能から考える、インターネット広告が必要な理由でも少し記載しましたが、インターネット広告は「ユーザーのとって価値がある」存在である必要があります。
これには、
・広告運用担当者は適切に文脈を踏まえた広告プランニングをたてる
・広告主はタイミングや中長期的な費用対効果を考えつつ適切に投資していく
・媒体はターゲティング精度を高める工夫を行う
・メディアは自然な形で広告を掲載する
・ユーザーは無料でwebサービスやwebメディアを利用できることを当たり前と思わない
などなど、インターネットを取り巻く多くの方々の小さな思いやりを積みかさせることが必要です。
「人間の行動を完全に予測することは難しい」という前提はあるものの、好きなものやよくおこなう行動、世の中のどのクラスタに属するかなど、そのユーザーに関する情報が多ければ多いほど、より「欲しい」「やりたい」「いいな」と思う情報を届けられることは当然です。
つまり極端なことを言うと、完璧に情報が漏洩しないデータバンクのような場所に各個人のありとあらゆる生活データを溜めると、統計値と個別最適により、ユーザーそれぞれにとってより価値のある広告体験に接触することができる、とも言えます。
※いわゆるCRM(顧客関係管理)がこれに近い発想のものですよね。自社データを活用する広告、というのも一つの手段だと思います。(画像はこちらより:CRM Development | Digital Frontiers – Dtiers)
ただ、現実的にはそれは難しいですよね。最近考えているのは、業種特化系媒体が増えたらということで、特定のデータを集めて、特定の配信面に特定の表示方法で広告掲載される媒体の方が、広告主のマーケティングにもユーザーの広告体験にもメリットがあるのではと思っています。
音楽で例えると、Last.FMやShazam、Apple Music等のデータからユーザーが好きなジャンルを分析し、そのユーザーがYouTubeで近いジャンルのミュージックビデオを見ようとした時に、動画広告として広告主が訴求したいとある新規アーティストの音源を聴いてもらう、というようなものです。既存媒体でも、ターゲティング精度を高めることと、プランニングを適切におこなうことで実現できる部分もあるでしょう。
ネイティブアド問題や広告ブロック機能など様々な話題もありますが、ユーザーのインターネット体験と広告のよりよい関係をつくるための工夫はまだまだできるはずです。広告主も、媒体も、メディアも、プランナーも、引き続き目の前の案件に一つ一つ丁寧に向き合っていきつつ、協力して未来の仕組みを整えていけたらと思います。