orange plus music

Blog

福岡ミュージックマンスから考える、音楽フェスと街づくりの関係性

2015.04.21

福岡県では昨年より、5つの音楽イベントと福岡市が連携し「福岡ミュージックマンス」というブランドで福岡を盛り上げる動きをしています。
この動きの背景を調べていくと、福岡県ならではの音楽フェスと街づくりの関係性がそこにはありました。
 

 

目次

 
1.福岡ミュージックマンスとは
2.福岡という街と音楽について考える
3.まとめ

 

1.福岡ミュージックマンスとは

 
FUJI ROCKやSUMMER SONICなど大手の音楽フェスに限らず、最近では日本各地で毎年様々なフェスが開催されるようになりました。
山や公園、海辺で開催されるものから屋内フェスまで、それぞれの地域や個性に基づく内容で各フェスが開かれています。
 
そんな中、自分の地元である九州地方の福岡県では、行政・民間・市民が一体となって音楽を盛り上げるような動きをしています。
象徴するのがこの福岡ミュージックマンスです。
 
福岡ミュージックマンス
 
9月、福岡では様々な音楽イベントが行われます。
海辺のフェスSunset Live、市役所前や商業施設など天神の街中で無料ライブを行うMUSIC CITY TENJIN、夕暮れ時の中州でジャズを無料で楽しむNAKASU JAZZなど、どれも色があってかつ規模の大きなイベントです。
例えばMUSIC CITY TENJINでは、福岡市役所前ステージでクラムボンがライブをしたり、天神に中心にある警固公園で青葉市子さん、七尾旅人さん、向井秀徳氏が弾き語りをしたりなど、無料とは思えない内容も過去にはありました。
 
この複数の音楽イベントをもっと福岡として盛り上げていくために、昨年から「福岡ミュージックマンス」として横に連携した動きをしています。
サイトのトップページには、3月に公開された福岡ミュージックマンスの紹介映像がアップされています。
 
設立の背景について、MUSIC CITY TENJIN主催の松尾さんがgreenzのインタビュー記事で触れていました。
 

ある時気付いたら、おもしろい音楽イベントが9月の福岡では集中してまして。ならばそこが連携することで規模感を持って街を盛り上げていけるのではないかな、と。(中略)そこで、天神・博多・中洲エリア、そして更に海の方までつなげて何かできれば!と。(音楽でつくる10年先の福岡の未来。「ミュージックシティ天神」主催・松尾伸也さん×おとまち佐藤雅樹さん対談「音楽イベントとその担い手の育て方」 – greenz)

 
純粋に「福岡という街を盛り上げよう」つまり「福岡という土地で人々に楽しんでもらおう」という目標に対して、行政が支援しつつ各イベントが協力できていることはとても素晴らしいことだと思います。
イベント側には自分のイベントの集客数や売上、行政には他産業や福祉などがある中で音楽という文化産業に投資するということ、という現実的に悩む課題もあると思われますが、その中で実際に形になっていることに人の情熱や志を感じます。
 
 

2.福岡という街と音楽について考える

 
このように、街という単位の中で複数の音楽フェスが連携するような動きは他県でもあるのでしょうか。
福岡県そのものを知るために、市の方針や音楽環境、居住環境などを調べてみました。
 
 
■福岡市の方針
 
福岡市が進めている事業には「クリエイティブ・エンターテインメント都市づくり推進事業」というのがあります。
若者率(人口に占める15~29歳の割合)が政令都市の中で1位、人口千人あたりの学生数では2位という特性も踏まえ「若い人材が豊富で活気のあるクリエイティブなまち」というイメージを福岡ブランドとして中長期的に確立させていく動きです。
 
平成25年1月には、この趣旨の団体であるCreative Lab Fukuoka(クリエイティブ・ラボ・フクオカ)を設立し、以後イベントや各種webサイトでの情報発信を行っています。市長のほか、企業の代表から大学教員、NPOなど福岡に関わる方々が多数協力をしています。
 
例えば以下のようなイベントやwebサイトがあります。
 
Creative City Fukuoka
CreativeCity Fukuoka
 
主催イベントから三菱地所アルティアムやその他の会場で行われる小さな展示会まで、福岡のアート系のイベント情報を中心に発信しているメディア。
イベントレポートやアーティストインタビュー記事などもキュレータブログとして掲載されており、最近おもしろかったのはこちら「米ロックバンド「OK Go」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」のPV、「新垣結衣ポッキー」のCM等数々のヒット作を手掛けている、振付稼業air:manとは?」
 
#FUKUOKA 福岡のクリエイティブな最新ニュース
#FUKUOKA 福岡のクリエイティブな最新ニュース
 
主にこれから福岡での仕事を考えている方々に役立つ情報を発信しているニュースサイト。
クリエイティブ情報に留まらず、スタートアップ情報や福岡の食、自然、働いている人々など幅広く福岡の魅力をコンテンツ化しています。
最近おもしろかった記事はこちらLinQ姫崎愛未が語る、故郷福岡への想い! 将来は「福岡でコスプレ専門のお店を作りたい」。福岡にはLinQというアイドルグループがいるのです。
 
The Creators
The Creators
 
福岡市役所前の広場にステージを設営し、夕方から夜にかけて行われた無料イベント。
市役所の壁を使った参加型プロジェクションマッピングや映像を交えたアイドル、ヒューマンビートボクサーのライブなどを2013年から行っています。
いつもは閑散とした広い空間が、この日はデジタル技術を交えた眩しいエンターテイメント空間に変わります。
 
その他にもFCBC(福岡クリエイティブビジネスセンター)CREATIVE CENTER FUKUOKA(クリエイティブセンター福岡)でクリエイターに対して職場や仕事の支援を行ったり、ぼくらの福岡クリエイティブ キャンプ FUKUOKA Creative Camp 2014などのイベントに関わって、他県からの企業勧誘やクリエイターの移住支援なども積極的に行っています。
 
最近では福岡市スタートアップカフェの開始など、起業支援も行っています。なんと先日ドローンの活用事例に関するイベントがあったそうです…すごい。
 
 
■音楽環境
 
そしてこちらも福岡市が運営するwebサイトFukuoka Facts | データでわかるイイトコ福岡ですが、音楽環境に関するデータもいくつか載っています。
 
福岡県のコンサート公演数の推移
 
福岡のライブハウスの数
 
先日Zepp福岡営業終了というニュースはありましたが、ライブハウスの数も公演数の数も他県に負けていないことが分かります。
 
また福岡出身のアーティストと言えば、椎名林檎、浜崎あゆみ、YUI、井上陽水、NUMBER GIRL、シーナ&ザ・ロケッツ、長渕剛、People In The Box、Ferri…と調べると多く出てきましたが、まだまだ今の世代でも目標となるような音楽を奏でている先輩達が身近にいることになります。
 
自分の感覚ですが、来福アーティストはマリンメッセ福岡やDRUM Logos等で、地元インディーズバンドは薬院UTEROやthe voodoo lounge等で、エレクトロニカやジャズ界隈は大名ROOMSや紺屋2023またはカフェなどで、主にライブをしているような気がします。
ほとんどが天神付近に集まっており、MUSIC CITY TENJINのコンテンツの一部でもあるサーキット型ライブ(複数のライブハウスを回って観覧できるライブ)が成立しやすいのではと思います。
 
 
■居住環境
 


 
福岡移住計画などでも述べられているとおり、福岡は食べ物が美味しく、また豊かな自然との距離が近い都市です。空港や港から天神、博多への移動も時間がかからず、また家賃が安く東京の3分の1ほどで住めます。
 
Sunset Liveが開催される糸島市という場所は、行ったことがある人は分かるかもしれませんが、福岡の中心街からだと少し距離のある場所です。
しかしSunsetのイメージ通り、本当に海が綺麗です。関東付近では味わえない青さが広がっています。そんな場所で音楽を楽しめるのです…!
また九州大学の伊都キャンパス設立を始め、今後は糸島を都市として発展させていきたいという戦略もあります。糸島の自然の魅力に触れてもらう一つの機会としての音楽フェスという見方もできます。
 
県外から来たアーティストも中心部まで簡単に移動ができ、また新鮮なお魚や豚骨ラーメンなど美味しくて低価格なご飯を食べられるという利点があります。九州の玄関口として、ライブという仕事のために来訪したアーティストに対して、土地を好きになってもらうような素材はいっぱいあるのです。
 
 
■福岡という街と音楽フェスについて
 
MUSIC CITY TENJIN
 
このように、若年代の人数が多いことや音楽活動が盛んであることに加え、市が方針を立てて音楽を中心とした文化産業を活性化させていこうという動きが福岡にはあります。
それは、クリエイティブにあまり触れる機会のない人に無料でその機会を提供するイベントだったり、クリエイティブに少し興味を持った人がより情報を知ることができるwebサイト運営だったり、専門学校や大学での専門教育やその後の就業、開業の支援だったり。産業の活性化に対して包括的に取り組んでいることが分かります。
 
産業の発展に対して複数のイベント団体や市が協力することによって、より多方面の人が関わる相乗効果により、アイディアに味が付いたり認知が更に拡大したりする利点があります。
その他にも同じ街として一体になることで、自然や食など文化産業以外の面も連動してアピールすることができ、福岡の中から見ても外から見ても「福岡がなにか楽しそう」という構図を作れているのだと思います。
 
先輩たちが築いた音楽環境と市の施策が今のタイミングで結びつき、福岡全体を活性化させるための一つの手段としても位置する音楽フェスたち、そしてそれを統合的にブランド化していく「福岡ミュージックマンス」。
様々な要素が揃った福岡県だからできる、新しい音楽フェスと街づくりの関係性がここには見られました。
 
 

3.まとめ

 

▼福岡の9月は「福岡ミュージックマンス」で熱い。
▼福岡市はクリエイティブ事業を推進しており、実際にイベントやwebメディアの運営を行っているほか、教育や起業支援にも力を入れている。
▼若者が多い、音楽活動が盛ん、自然が豊か、美味しいご飯がある、家賃が安い…福岡には魅力がいっぱい。
▼産業と都市の発展という意味も含めた街づくり、その一つの手段として音楽イベントの開催もある。

 
音楽産業の持続的な発展に必要な要素はいくつもあると思いますが、地域でそれを包括的に実践している一つのモデルとしても、この福岡市の動きは参考になる部分が多いかもしれません。
 
「福岡ミュージックマンス」の今後の動きも楽しみであります。
 
 
個人的には、もっともっと熱量をインターネットを通じて東京などの他県まで届けて欲しいところであります。
もっと「福岡は音楽が熱い」と見せる方法とは…いま思い浮かぶだけでも
①htmlでの改善(TwitterカードやFacebookで共有されたときのテキストやfaviconの整理)
②HP内のコンテンツ改善(各イベントのニュースやアーカイブの作成、また9月にこのサイトに定期的に訪れる仕組み作り)
③ソーシャルメディアアカウントの活用(キュレーション的に情報を日々発信することで、無料で認知ユーザーを増やしていく)
という感じです…ぜひ期待しています。
 
 
 
最後まで読んで頂きありがとうございました!
 
 
※その他参考
クリエイティブ・エンターテインメント都市を目指して
福岡市が目指す、クリエイティブ・エンターテインメント都市とは。- BOND
音楽が変えるまちの風景。坂口修一郎さん、松尾伸也さん、佐藤雅樹さんと「音楽×まちづくり」の可能性について考えてみました [イベントレポート]- greenz

Share

Follow Twitter

orange plus musicの最新情報は
Twitterをフォロー!

Follow Spotify

おすすめの穏やかな音楽を
Spotifyプレイリストで発信中!